close
「結婚しよう。俺は、一緒になりたい。」


『都古ちゃんへ
 今日は動物園に仕事に行きました。
 都古ちゃんと焼き芋を食べました。
 都古ちゃんと帰りました。』


「ごめんね。」
「ううん。なあ、彼は都古のことが好きなんじゃないの?」
「それは子供の頃からずっと一緒だからね。」
「そういうんじゃなくってさ。彼は、恋愛感情ってあるの?」
「テル?ないない!」
「そう?」
「テルの場合、恋愛感情ってわかってないと思う。
 ただ・・テルにとって私は、いつもそばにいる存在だったから、
 テルから離れるのはやっぱりちょっと心配。」


『新メニュー チキンカレー あります!』
「良かったね!テル。」と都古。
「いただきます。」


風呂から上がる輝明を、里江が待っていた。
「おやすみなさい。」
「輝明、話があるの。座って。」
「はい。」
「・・・ねえ、結婚って、わかる?」
「お兄ちゃんは1994年に結婚しました。」
「そう。真樹さんと、結婚したの。
 真樹さんと、一緒に暮らして、新しい家族を作ったのよ。
 その時、真樹さんは、仕事を辞めた。
 仕事を辞めて、お兄ちゃんと暮らすことが、
 真樹さんにとって・・・いいことだったから。」
「いいこと?」
「そう。いいこと。わかるわよね。」
「・・・」
「・・輝明?」
「僕も、結婚するの?」
「・・・」
「結婚するの?」
「結婚は・・・する人もいれば、しない人もいるの。
 結婚、するのが良くて、しないのが悪いっていうわけじゃないのよ。
 結婚だけじゃない。
輝明は、人より苦手なことが多いけれど、それだって同じ。
 出来ることが、多いことが良くって、少ないのが悪いっていうわけじゃないの。」
里江はそこまで言うと、席を立ち、輝明の後ろに回り
彼の肩を揉み始める。あふれ出る涙を隠すために。
「自分が出来ることを、一生懸命やればいい!」


「テル。私が代わりに怒ってあげる。」
テルが顔を上げ、「私が代わり怒ってあげる。」と繰り返すう。
「うん!」都古が頷いた。


その様子を、じっと見つめていた輝明。
「都古ちゃん・・・どうして泣いているの?」
「・・・」
輝明が歩み寄る。
「いいことなのに。」
「・・・」
「いいことなのに。」
「そうだね。笑わなきゃいけないのにね。」
都古はそう言い泣き続ける。
「都古ちゃん。僕が代わりに笑ってあげる。」
そう言い、輝明は静かに微笑む。
優しい、穏やかな微笑みを浮かべる。
「ありがとう、テル。」
都古はそう言い泣き続けた。

arrow
arrow
    全站熱搜

    EmelyTsai 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()