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「僕は、彼女といると、探し物ばかりしているんだ。」


生きるのに精一杯で、笑うことも忘れて日々を送っていた。


「魔法が解けたシンデレラには、
 カボチャの馬車と、みすぼらしい服が残ったように、
 僕達も、現実に引き戻される。」


「久しぶり。」と弘人。
「こんばんは。」
「その場のノリって思わなかった?」
「ちょっと思ったけど、約束したし。それに、」
「それに?」
「それに、あなたにもう1度会いたかった。」
「あんたいっつも正直すぎるよ。」
「そうかな。」
「なんか、そんな風に生きてきて、傷つくことなかったの?」
「・・・あったよ。でも、決めたんだ、私。
 思ったことはなるべく言って、相手に伝えて、
 自分にも人にも、嘘をつかないで生きていこうって。」
「何で?」
「嘘ついてると、本当のことわかんなくなりそうで それが嫌だったの。
 ごまかしたくない。
 本当のことわかっていたいっていうか、本当のこと感じていたい。」
「俺もさ・・勇気出したんだ。ここ来るの。
 誰でもさ、裏切られて、ポツンと一人で立ち尽くすの、嫌でしょう?」
「うん・・・。」
「来てもあんたいないかもしないし、つーかその方が可能性高いっしょ。」
「そうかな。」
「そうだよ。普通。でも、ちゃんと来ました。」
「どうして?」
「それ言わせんの?いや俺あんたじゃないからさ、
何でもこうすらすら、言えないんだよね。ここまでで勘弁して。」
弘人の言葉に微笑む菜緒。
「帰ろうか。」
弘人に言われ、菜緒が頷く。


「恋の始まりは、いつだって赤ちゃんの時みたいに、ささやかで、美しいんだ。
 それが、その後、どれほど残酷で苦しい恋に育っていくとしても・・・。
 僕は・・・その運命を逃れられない。」

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